いよいよ入院です。
しばらくはコテコテの脂っこいメニューやお肉とはお別れなので、
前日はステーキを食べました。
なんか死刑囚の最後の晩餐みたいで・・・味がよくわかりません。

１９日に入院して、手術は２２日。３日後なのに入院当日より、もう絶食です。
入院前の朝食に全てを賭けるべきだった！思わぬ油断に唇をかんだりして・・・
恥ずかしいほど食い意地が張っているので、手術への不安どころではなく、
本気で後悔しました。

毎日心機能、呼吸機能等の検査があり、手術前日には内視鏡を入れて
インクのようなもので腸の内側から印を付けました。
明日の腹腔鏡の手術の時に、「この辺が癌だよ」とわかるようにです。
また、前日にはお腹の剃毛があり、手術室の担当の看護師さん、麻酔担当の
医師が次々に現れ、気分は否が応でも手術モードに。
手術は東京医大の腹腔鏡下手術に慣れた外科医チームが担当に。
でも、前日は意外なほど落ち着いていて、当夜はぐっすり就寝でした。

手術当日、１３次３０分頃看護師さんが呼びに来ました。
「中央手術室」の自動ドアを過ぎ、横になったベッドごといくつかある
手術室の一つへ。
心電図等のモニターの端子をペタペタと貼り付けられると、
ピッ、ピッ、ピッという規則的なあの音が・・・
「意外と速くないな、緊張していないのかな・・」
「これから眠くなりますよー」という声が・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「白井さーん、わかりますかー？」
・・えっ？・・もう終わったの？
感覚としては数分しか経過していない感じですが、壁の時計を見ると
何と夜中の１２時を過ぎているではないですか。１０時間以上も経過していた
なんて。
手術にかなり時間がかかったようですが、担当医の説明では、お腹の中が
脂肪だらけのメタボでやりにくかったこと、癌の大きさが予想よりも大きく、
当初予定していたリンパ節郭清を広範囲に変更したこと、が理由だそうです。

寒さでガタガタ、ブルブル震えながら術後回復室に移動。
ストレッチャーに乗せられ廊下を移動する際、流れゆく天井の景色を
夢見心地で見ていました。

体中管がいっぱい入っています。鼻からは胃管が、背中には持続硬膜外麻酔
（痛み止め）の管が、お腹の傷にはドレナージ用の管が、
そして尿道カテーテルも・・・

医学生時代、また、一般の病院に勤めていた頃、何度も目にした術後の
患者さんの光景です。
今は自分が・・・口と鼻を覆っているマスクには酸素がシューッ・・・
・・・鼻から入っている管が結構苦しい・・・早くこれ、取れないかな・・・
シューッ・・・・隣のベッドでは、やはり術後間もないおばあさんのうなり声が
・・・何の手術だったんだろう・・・痰が絡むけど・・出せない・・・
看護師さんに吸引してもらう・・「たばこを吸う人は、術後痰が絡んで苦しいよ」
と聞いていたけど、本当だ・・・タバコなんか絶対止めてやる・・・
鋭くはないけど、鈍い痛みが・・・お腹全体を包み込むようで・・・腰も痛い
・・・体勢を変えたいけど・・・体が思うように動かない・・・
１時間おき位に看護師さんが体温と血圧を計りにやってきます。
「のどがカラカラで・・」・・・水に浸したガーゼで口の中を潤してくれます。
・・・あーぁ、ありがたい・・・「ちょっと横向きに・・」・・・
布団を引っ張りながら体勢を変えてくれます。・・・天使のようだ・・・

もうろうとした意識の中で時が過ぎていき、気が付けば午前１０時に。
担当の医師がやってきて、胃管を抜いてくれ、術後回復室から病室に移動です。
生死の境から生還したような気分です。

早速看護師さんがやってきて、「今日から少しずつ動いて下さい。明日は胸と
お腹のレントゲンを撮りますから、１階に降りてもらいますよ。自力でトイレに
行けるようでしたら、管も抜きますよ」
いきなりこれです。

術後の早期離床は最近の医療の特徴で、どの病院でも積極的に実践されています。

これから、早期離床と人工肛門に慣れるまで、悪戦苦闘を強いられます。

　闘病日誌３へ続く

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